Gargamelle

Gargamelle 泡箱、今日は CERN の屋外に展示されている。
Gargamelle 泡箱、今日は CERN の屋外に展示されている。写真:Wiso, CC BY-SA 3.0, Wikimedia Commons

GargamelleはCERNにあったバブルチェンバーであり、 1973年に素粒子物理学のもっとも重要な知見の一つを与えた。 中性カレントの検出である。

これによって電弱相互作用の理論は優美な推測から検証された物理となり、 WボソンとZボソンへの道が開かれた。

バブルチェンバーとは何か

バブルチェンバーは沸点のすぐ下にある液体を収めている。 荷電粒子がそこを通り抜けると、 その軌道に沿って微小な蒸気の泡が生じる。 閃光と複数のカメラがその飛跡を写し取る。

この方法には、 当時のどの電子的な検出器にもできなかった利点がある。 事象を見ることができるのである。 どの飛跡も画像として存在し、 枝分かれも曲がりも途切れもすべて残る。

そして欠点もある。 どの写真も人間が解析しなければならなかった。 CERNではそのために、 解析を担当する女性たちの部署がいくつも働き、 一枚また一枚と写真を見ていった。

建造

Gargamelleはフランスで製造され、 1970年からCERNで運用された。 容器は長さおよそ4.8 メートル、 直径2 メートル弱で、 およそ12 立方メートルの重フレオンを収めた。

液体の選択は決定的であった。 フレオンは密度が高く、 密度が高いということは体積あたりの原子核が多いということである。 つまりニュートリノがそもそも相互作用する機会が多い。 この程度の断面積をもつ粒子にとっては、 1グラムが物を言う。

名前はラブレー(Rabelais)の小説に由来する。 Gargamelleはガルガンチュア(Gargantua)を産む女巨人である。

問い

1967年に定式化されたグラショウ(Glashow)、 サラム(Salam)、 ワインバーグ(Weinberg)の電弱理論は、 異例なことを予言していた。

知られていたのは、 ニュートリノが荷電レプトンに変わる過程である。 荷電カレントである。 理論はそれに加えて、 ニュートリノがニュートリノのままでエネルギーだけを移す過程を要求した。 中性カレントである。

そのような事象を観測した者はそれまで誰もいなかった。 もしそれが存在しなければ理論は反証されたことになり、 弱い力と電磁気力の統一の見通しも失われていたはずである。

検出

求められている像は独特である。 ニュートリノが入ってくる。 見えない。 それが核子に当たってハドロンのシャワーを生み、 そしてまた消えていく。 これも見えない。

したがってフィルムの上には、 何もないところから生じ、 ミューオンを伴わない飛跡の束が見える。 荷電カレントであれば、 代わりに長く途切れないミューオンの飛跡が見えるはずである。

共同研究グループはまさにそのような写真を見いだした。 ミューオンを伴わない事象がおよそ100個、 ミューオンを伴う事象が数百個である。 その比は予言と合っていた。

本当の難しさ

難しかったのは見つけることではなく、 排除することであった。

周囲から来る中性子が同じ像を生みうる。 中性子もまた電荷をもたず、 同じく見えず、 衝突すればやはりシャワーを生む。

共同研究グループはこれを空間分布によって解決した。 中性子は外から来て液体の中ですぐに止められる。 したがってその事象は縁に集まるはずである。 ニュートリノはすべてを貫き、 体積全体にわたって一様に事象を生む。

見いだされた事象は一様に分布していた。

さらにフランツ・ヨーゼフ・ハーゼルト(Franz Josef Hasert)が一枚の写真を見つけた。 そこでは電子が見てとれる原因なしに向きを変えている。 これはニュートリノが電子に散乱するという、 考えうるかぎりもっとも純粋な形の中性カレントである。 たった一つの事象だが、 ほかの解釈の余地がまったくないものであった。

帰結

1973年7月、 CERNはこの検出を公表した。 この知見は電弱理論を信頼できるものにし、 グラショウ、 サラム、 ワインバーグは1979年にノーベル賞を受けた。 ボソンそのものが見つかるより前のことである。 その検出は1983年に同じくCERNで成功した。

ニュートリノ物理学にとってGargamelleは直接の意味をもつ。 今日の小型検出器が依拠している原子核でのコヒーレント散乱は、 中性カレントによる過程である。 またSudbury Neutrino Observatoryは、 荷電カレントと中性カレントを互いに比較することによって太陽ニュートリノ問題を解いた。

1973年の知見がなければ、 そのための理論も、 そのようなものが測定できるという予想も存在しなかったであろう。

その後

このチェンバーは1979年に亀裂によって使用不能になった。 現在はCERNの屋外展示場に置かれており、 外から眺めることのできる数少ない素粒子物理学の大型装置の一つである。

関連項目

出典

  • F. J. Hasert ほか(Gargamelle共同研究グループ): Observation of neutrino-like interactions without muon or electron in the Gargamelle neutrino experiment, Physics Letters B 46, 138 (1973).
  • F. J. Hasert ほか: Search for elastic muon-neutrino electron scattering, Physics Letters B 46, 121 (1973).