エットーレ・マヨラナ

エットーレ・マヨラナ。
エットーレ・マヨラナ。写真:unbekannt, Mondadori Collection, パブリックドメイン, Wikimedia Commons

エットーレ・マヨラナ(Ettore Majorana)(1906年8月5日 – 1938年3月27日以降行方不明)は、 イタリアの物理学者である。 ニュートリノが自分自身の反粒子であるかという問いは彼に由来する。 それは90年近くを経てなお開かれたままの問いである。

彼の失踪は、 科学史でもっともよく知られた未解明の事件の一つである。

並外れた才能

マヨラナはシチリア島のカターニアの出身で、 工学の勉学を経て物理学に至った。 1928年からはローマのエンリコ・フェルミ(Enrico Fermi)の研究グループに属した。

フェルミ自身は多くを語る人ではなかったが、 彼については異例の評価をくだした。 遠くまで到達する一流の科学者たちがおり、 そのうえでガリレイ(Galilei)やニュートン(Newton)のような天才がいる。 マヨラナは後者に属する、と。

一つの性癖がこの才能を生かしにくくしていた。 マヨラナはほとんど発表しなかった。 彼は物事を計算し尽くし、 その結果を紙片に書き留め、 その紙片で煙草に火をつけ、 家に帰るのであった。

もっともよく知られた例がある。 1932年、彼はキュリーら(Curies)の実験から原子核の中の中性粒子を推論した。 フェルミはそれを発表するよう強く促した。 彼はそうしなかった。 その数週間後にジェームズ・チャドウィック(James Chadwick)が中性子を検出し、 1935年にその業績でノーベル賞を受けた。

1937年の論文

彼の最後の発表は、 同時に彼のもっとも影響の大きなものである。

ポール・ディラック(Paul Dirac)は1928年に一つの方程式を立てた。 そこからは、あらゆる粒子に反粒子が存在しなければならないことが導かれた。 電子についてはそれが当たっていた。 陽電子は1932年に見つかった。

マヨラナは、別のあり方も可能ではないかと問うた。 彼は電気的に中性な粒子については、 粒子と反粒子が同一であるような方程式が存在することを示した。 そのような粒子は今日マヨラナ・フェルミオンと呼ばれる。

荷電粒子についてはこれは除外される。 電子が陽電子であることはありえず、 電荷が互いに矛盾するからである。 しかしニュートリノは中性である。 ニュートリノにおいては、 マヨラナの可能性が開かれたままである。

彼自身は、 それがニュートリノに適用できるとはっきり考えていた。

失踪

1938年3月25日、 マヨラナは教鞭をとっていたナポリで貯金を引き出し、 パレルモ行きの船に乗った。 そこから彼は矛盾する二通の便りを送った。 一通は遺書とも読めるものであり、 もう一通はそれを取り消すものである。 3月27日、 彼はナポリへ戻る船に乗った。 彼はそこに着くことはなかった。

捜査は何ももたらさなかった。 数十年のあいだに複数の説明が持ち出された。 自死、修道院への隠遁、南米への移住である。 イタリアの検察は2015年、 証言を検討したうえで、 彼が一時期ベネズエラに住んでいたという結論に達した。 これらの説のいずれも確証されていない。

マヨラナは31歳であった。

彼の問いが今日重要である理由

ニュートリノ振動がニュートリノに質量があることを裏づけて以来、 マヨラナの提案はもはや戯れではなく、 素粒子物理学の中心的な未解決問題の一つとなっている。

ニュートリノがマヨラナ粒子であるとすれば、 レプトン数は厳密な保存量ではないことになる。 それはシーソー機構への道を開くことになる。 この機構はニュートリノ質量の極端な小ささを説明しうるものであり、 さらにレプトジェネシスを通じて、 なぜ宇宙が物質からできているのかという説明への道をも開く。

この問いはニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊によって決着させられるだろう。 世界中で複数の実験がそれを探している。 見つけた実験はまだ一つもない。

その後の影響

マヨラナ・フェルミオンという概念は、 とうに素粒子物理学を越えて広がっている。 固体物理学では、 形式的にマヨラナ粒子のようにふるまう超伝導体中の励起が研究されており、 これは誤りに強い量子計算機の開発にとって興味深いものである。

こうして1937年の9ページの論文は、 当時はどちらも存在しなかった二つの分野で、 今日なお作用し続けている。

関連項目

出典

  • E. Majorana: Teoria simmetrica dell'elettrone e del positrone, Il Nuovo Cimento 14, 171 (1937).
  • E. Amaldi: Ettore Majorana: Man and scientist, in Strong and Weak Interactions, Academic Press (1966).