SAGE

SAGE が稼働していた Baksan 観測所の、ガリウム・ゲルマニウム・ニュートリノ望遠鏡の主ホール。
SAGE が稼働していた Baksan 観測所の、ガリウム・ゲルマニウム・ニュートリノ望遠鏡の主ホール。写真:Konstantin Malanchev, CC BY 2.0, Wikimedia Commons

SAGE——Soviet-American Gallium Experiment——は、 ロシアのカフカスにあるバクサン・ニュートリノ観測所の太陽ニュートリノ検出器である。 1990年に運転を開始し、 ニュートリノ物理学でもっとも長く続いている実験の一つである。

二つの世界から生まれた実験

その名は同時代史の一片を語っている。 SAGEは冷戦の終わりに、 ソビエトとアメリカの研究機関の協力として生まれた。 そのような計画が政治的に決して当たり前ではなかった時代のことである。

この共同研究グループはソビエト連邦の崩壊を乗り越え、 今日もRussian-American Gallium Experimentという名のもとで活動を続けている。

検出器はアンディルチ山の下の坑道にあり、 上にはおよそ2,000 メートルの岩盤がある。

装置

SAGEはGALLEXとは異なり、 金属ガリウムを用いる。 およそ50 トンを、 およそ30 度に保っている。 ガリウムは29.8 度で融けるため、 運転温度では液体であるが、 溶かされてはいない。

検出の過程は同じである。 ニュートリノがガリウム71の原子核をゲルマニウム71に変える。 閾値は233 キロ電子ボルトである。 これによりSAGEもppチェーン、 すなわち太陽の主要な反応に由来するニュートリノを捉える。

液体金属からの抽出は、 塩化物溶液からの抽出よりも化学的に難しい。 水溶液を加えて両者を強くかき混ぜ、 ゲルマニウムを水相へ引き出すのである。 GALLEXと同じく、 ここでも一つの測定期間あたり数十個の原子が問題になる。

なぜ二つの実験が必要だったのか

GALLEXとSAGEが同時に、 しかも異なる化学的方法で稼働していたのは偶然ではなく、 意図的なことであった。

どちらも危うい連鎖に基づいている。 ニュートリノが原子を生み、 その原子が化学的に取り出され、 その崩壊が数えられる。 どの段階でも何かが失われうる。 そして損失は、 ニュートリノが欠けているのとまったく同じように見える。

二つのグループが異なる技術で、 異なる国で、 異なる山の下で同じ欠損を測るなら、 その結果は実験室の誤りではない。 どちらも期待される割合のおよそ60パーセントを見いだした。

二重の校正

SAGEもまた人工の線源によって自らを検証した。 しかも二つの異なる線源によってである。

1995年にはGALLEXと同じくクロム51の線源が用いられた。 2004年には、 やや高いエネルギーのニュートリノを与えるアルゴン37の線源が続いた。 これによりこの方法は二つの独立な点で検証された。

ガリウム異常

これらの校正測定の際に予期しないことが現れた。 SAGEでもGALLEXでも、 測定された割合が線源強度から計算される値を下回ったのである。 その差はおよそ10から20パーセントであった。

この現象はガリウム異常と呼ばれる。 考えうる一つの解釈はステライルニュートリノである。 弱い相互作用と結合しない第四の種類であり、 ニュートリノの一部が短い距離でそこへ転移しうるというものである。

同じくバクサンにある後継実験BESTは、 2019年からこの問いを的を絞って追究した。 大きさの異なる二つの入れ子になったガリウムの体積が同時に照射された。 短い距離での転移があれば、 両者の測定値は異なっていたはずである。 欠損は2022年に確認されたが、 体積のあいだの差は明確には現れなかった。

その背後に新しい物理があるのか、 それとも原子核の遷移における過小評価された不確かさがあるのかは、 今日まで未解決である。

位置づけ

SAGEは二つのことを示している。 第一に、 独立な繰り返しがいかに価値あるものかということである。 二つのガリウム実験は太陽ニュートリノ問題を、 奇妙な事実から確固たる知見へと変えた。

第二に、 入念な校正は保証を与えるだけでなく、 それ自体が新しい問いを生みうるということである。 ガリウム異常は探されたものではない。 誰かが注意深く見たために目についたのである。

関連項目

出典

  • SAGE共同研究グループ: Measurement of the solar neutrino capture rate with gallium metal, Physical Review C 80, 015807 (2009).
  • BEST共同研究グループ: Results from the Baksan Experiment on Sterile Transitions, Physical Review Letters 128, 232501 (2022).