Daya Bay
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Daya Bayは中国南部の広東省で行われた原子炉実験であった。 これは2012年にニュートリノ振動の最後の未知の混合角を決定し、 それによってCP対称性の破れの探索への道を開いた。
欠けていた角
PMNS行列は三つの混合角を含む。 そのうち二つは2000年前後に知られていた。 太陽ニュートリノとKamLANDから得られたθ₁₂と、 大気ニュートリノから得られたθ₂₃である。
三つめのθ₁₃は未知であり、 ゼロである可能性もあった。
この数値には多くがかかっていた。 θ₁₃がゼロであったなら、 レプトン部門でのCP対称性の破れはまったく測定できなかったはずである。 対応する位相がどの観測量にも現れなくなるからである。 宇宙がなぜ物質でできているのかという問いは、 この道では答えられないままになっていたであろう。
以前の実験はθ₁₃に上からの制限を与えたにすぎなかった。 すべての手がかりはそれが小さいことを示していた。 問題は、 小さいのかゼロなのかであった。
構造
この場所には合わせて17.4 ギガワットの熱出力をもつ6基の原子炉があり、 世界でもっとも強いニュートリノ源の一つである。
Daya Bayは、 それぞれ20 トンのシンチレーターを収めた同一構造の検出器8台を、 三つの地下ホールに配置した。 原子炉に近いおよそ500 メートルの位置に二つ、 そしておよそ1,650 メートルの遠いホールに一つである。
シンチレーターにはガドリニウムが加えられていた。 この元素はとりわけ進んで中性子を捕獲し、 その際に強い光信号を放つ。 これにより二つの閃光による遅延同時計数がはるかに明瞭になる。
なぜこの構造が決定的だったのか
工夫は比較にある。 近い検出器は原子炉が放出するものを測り、 遠い検出器は到達するものを測る。
これにより最大の不確かさが消える。 原子炉がどれだけの反ニュートリノを正確に放出するかは、 燃料、 燃焼度、 そしてそれ自体が数パーセントの精度でしか知られていない核データに依存する。 数パーセントの欠損が問題になる測定にとって、 これは致命的であったはずである。
しかし8台の検出器はすべて同一構造であり、 同じ製造ロットの同じシンチレーターで満たされていたため、 これらの不確かさは比をとるとほぼ完全に相殺される。
検出器は運転中にホールのあいだで交換されさえした。 装置に起因する差の最後の残りまで排除するためである。
結果
2012年3月、 共同研究グループはわずか55日の測定時間ののちに結果を示した。 θ₁₃はゼロとは異なり、 その有意性は5標準偏差を超える。
しかもその値は多くの予想より大きかった。 次世代の装置でCP対称性の破れを測定可能にするのに十分な大きさである。
数週間後、 韓国のRENOとフランスのDouble Choozという実験がこの知見を確認した。 T2Kはその少し前に、 ビーム中に電子ニュートリノが出現することを通じて、 もう一方の側からの最初の手がかりを与えていた。
2020年12月に測定を終えるまでに、 Daya Bayはθ₁₃をおよそ3パーセントの精度で決定した。 今日に至るまでもっとも精確な値である。
そこから生じたもの
この結果がなければ、 Hyper-KamiokandeもDUNEも今日の設計では存在しなかったであろう。 どちらもニュートリノと反ニュートリノのあいだの非対称性を測るためにつくられている。 そしてそれがそもそも可能であることを示したのがDaya Bayである。
関連項目
出典
- Daya Bay共同研究グループ: Observation of Electron-Antineutrino Disappearance at Daya Bay, Physical Review Letters 108, 171803 (2012).
- Daya Bay共同研究グループ: Precision Measurement of Reactor Antineutrino Oscillation at Kilometer-Scale Baselines, Physical Review Letters 130, 161802 (2023).