シンチレーター
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シンチレーターとは、 荷電粒子が通り抜けるときに光る物質である。 それはチェレンコフ放射と並ぶ、 ニュートリノ物理学の第二の大きな検出原理であり、 光の円錐を生み出すには静かすぎるものすべてを受け持つ。
発光はどのようにして生じるか
飛び抜けていく荷電粒子は電子を結合から引きはがし、 分子を励起した状態へ持ち上げる。 この励起はナノ秒しか続かない。 元へ落ちるときに、 分子はそのエネルギーを光の閃きとして渡す。
有機シンチレーターでは、 それが二つの段階で起こる。 溶媒がエネルギーを受け取り、 それを溶かし込まれた蛍光体へ渡し、 蛍光体が紫外線を放つ。 第二の添加物である波長シフターが、 それを青い光に変える。 光電子増倍管が感度をもつのはその青い光に対してだからであり、 また20 メートルの液体を飲み込まれずに通り抜けられるのも青い光だけだからである。
そのため現代の液体シンチレーターは三つの成分から成る。 ふつうは直鎖アルキルベンゼンである溶媒、 それに1リットルあたり数グラムの PPO、 そして数ミリグラムのシフターである。
決定的な利点
チェレンコフ放射との違いは、 一つの数字にある。 シンチレーターはメガ電子ボルトあたりおよそ1万個の光子を供給するが、 水の検出器は数百個にとどまる。
この50倍の光の収量から、 ほかのすべてが導かれる。 エネルギーをはるかに正確に決められるようになり、 とりわけ検出の閾値が大きく下がる。 数百キロ電子ボルトの事象が見えるようになるのである。
まさにそれに基づいていたのがBorexinoの成功であった。 それは低いエネルギーの太陽ニュートリノを初めて実時間で数えた。 水では不可能だったことである。
その代償はこうである。 光はあらゆる方向へ一様に放たれる。 粒子の方向は失われる。 Super-Kamiokandeのような水の検出器はニュートリノがどこから来たかを言えるが、 シンチレーターの検出器はそれができない。
二重信号
第二の大きな長所は時間分解能である。 シンチレーターは数ナノ秒のうちに応答し、 それがクライド・カワンとフレデリック・ライネスが1956年に考え出し、 今日までどの原子炉での測定をも支えている特徴を可能にする。
逆ベータ崩壊では反ニュートリノが陽子に当たり、 陽電子と中性子を生み出す。 陽電子はただちに対消滅する。 第一の閃きである。 中性子は数マイクロ秒のあいだ動き回り、 やがて捕獲される。 第二の閃きである。
正しい時間の間隔をおいた二つの閃きは、 実際上ほかのものと取り違えようがない。 そのためKamLAND、 Daya Bay、 JUNOはいずれもシンチレーターで動いている。
固体のシンチレーター
液体のほかに、 結晶と樹脂の種類がある。
結晶、 たとえばいずれもタリウムを添加したヨウ化ナトリウムやヨウ化セシウムは、 さらに多くの光とよりよいエネルギー分解能をもたらす。 ただし高価であり、 湿気に弱く、 大量には手に入らない。
樹脂のシンチレーターは好きな形に成形でき、 安い。 それは鋼板のあいだに層をなして置かれる。 たとえばMINOSでは、 エネルギー分解能よりも質量と飛跡の位置が重んじられた。
純度という限界
低いエネルギーでは、 検出器そのものの自然放射能が敵になる。 物質はどの1グラムにもウラン、 トリウム、 カリウムの痕跡を含んでおり、 日常では問題にならないが、 ここでは致命的である。
そのため Borexino は、 シンチレーターの原子 10¹⁸ 個に対してウラン原子およそ1個という純度に達し、 世界で最も清浄な場所となった。 この精製法の開発には設備の建設より長い時間がかかった。 そしてそれこそが、 JUNO が70倍の体積で同じ純度をそもそも目指せる理由である。
パルス波形解析
最後の工夫である。 光の閃きの形が粒子の種類を明かす。 アルファ粒子は電子よりも少し長く尾を引くパルスを生み出す。 エネルギーをより密に置いていくからである。
これによって、 放射性の崩壊による背景の事象を本物のニュートリノ事象から切り分けられる。 追加の装置なしに、 信号の時間の姿だけからそれができるのである。
関連する項目
- チェレンコフ放射 — もう一つの検出原理
- Borexino — 純度における物差し
- JUNO — 最大の規模での同じ技術
- カワン・ライネスの実験 — 二重信号
出典
- Borexino 共同研究グループ: The Borexino detector at the Laboratori Nazionali del Gran Sasso, Nuclear Instruments and Methods A 600, 568 (2009).
- JUNO 共同研究グループ: JUNO Physics and Detector, Progress in Particle and Nuclear Physics 123, 103927 (2022).