チェレンコフ放射

オークリッジの研究炉 HFIR での燃料交換のさいに見えるチェレンコフ放射の青い光。
オークリッジの研究炉 HFIR での燃料交換のさいに見えるチェレンコフ放射の青い光。写真:Jason Richards, Oak Ridge National Laboratory, CC BY 2.0, Wikimedia Commons

チェレンコフ放射とは、 荷電粒子が透明な媒質を、 そのなかを光が進むよりも速く通り抜けるときに生じる青みがかった発光である。 それはSuper-KamiokandeIceCubeKM3NeTSudbury Neutrino Observatoryの検出原理である。

光より速く、しかし c より速くはない

この言い方は矛盾に聞こえるが、 矛盾ではない。 越えられないのは真空中の光速だけである。 水のなかでは光はその4分の3ほどの速さでしか進まない。 分子に絶えず吸収されては再び放出されるからである。

これに対して電子はそれによって減速されない。 つまり電子は水中の光より速くありうるのであり、 相対性理論を破ることはない。

船首波の像

そのとき何が起こるかは、 水と空気からよく知られている。

自分自身の波よりゆっくり進む船は、 円形の波を前へ押しやる。 より速く進めば波は後ろに残り、 重なり合ってくさび形の船首波になる。 超音速の航空機では、 同じ現象がマッハ円錐と呼ばれる。

水中の荷電粒子では、 それが電磁的に対応するものになる。 粒子に付き従う光の円錐である。

この円錐の開き角は速さだけで決まる。 したがってそこから粒子がどれほど速かったかを読み取ることができる。 そして水のなかには鋭い閾値がある。 真空中の光速の4分の3ほどを下回ると、 円錐はまったく生じない。

青く光る理由

放射は色のあいだに一様には分かれない。 その強度は短波長の端に向かって増していく。 青ければ青いほど多いのである。

そのため原子炉の水槽での発光は深い青に見える。 研究炉の写真を見たことのある者は、 この色を知っている。 それは核分裂生成物の崩壊から生じる電子に由来し、 その電子は冷却水を、 そのなかの光より速く通り抜けているのである。

検出器がそこから読み取るもの

水槽の壁の上に、 円錐はを描く。 そこから三つのことが読み取れる。

方向。 環の位置は粒子がどこから来たかを、 したがってニュートリノがどの方向から入ってきたかを示す。 まさにそれが小柴昌俊に、 測定されたニュートリノが実際に太陽から来ていることを初めて実証させたのである。

エネルギー。 環が明るいほど、 粒子のエネルギーは高い。

粒子の種類。 ここに決定的な点がある。 電子は水中で曲げられ、 小さなシャワーを生み出すため、 その環はぼやけている。 ミューオンはほぼまっすぐ進むため、 その環は輪郭が鋭い。

1998年の梶田隆章の発見は、 この区別に基づいている。 彼がミューニュートリノは欠け電子ニュートリノは欠けていないことを示せたのは、 検出器が両者を区別できたからにほかならない。

この方式の限界

短所は収量である。 水の検出器はメガ電子ボルトあたり数百個の光子しか得られないが、 シンチレーターはおよそ1万個を供給する。

そこから検出の閾値が高くなる。 エネルギーの低いニュートリノ、 たとえば太陽の主反応から来るものは、 水の検出器には見えないままである。 それにはBorexinoのような設備が要る。

つまり二つの方式は互いを補い合う。 水は方向と大きな体積をもたらし、 シンチレーターは感度をもたらすのである。

発見

パーヴェル・チェレンコフ(Pavel Cherenkov)は1934年にモスクワでこの発光を観測した。 イリヤ・フランク(Ilya Frank)とイーゴリ・タム(Igor Tamm)が1937年にそれを理論的に説明した。 三人は1958年にともにノーベル物理学賞を受けた。

関連する項目

出典

  • P. A. Tscherenkow: Visible emission of clean liquids by action of γ radiation, Doklady Akademii Nauk SSSR 2, 451 (1934).
  • ノーベル財団: ノーベル物理学賞1958年。