KM3NeT

KM3NeTは地中海にあるニュートリノ望遠鏡である。 検出器をつくる代わりに海そのものを使う。 光センサーが水中の索に吊るされ、 ニュートリノが深部で光の閃光を引き起こすのを待っている。
この計画は南極点のIceCubeに対するヨーロッパ側の対応物である。
二つの装置、二つの課題
KM3NeTは目的の異なる二つの部分からなる。 技術は同じで、 センサーの間隔だけが異なる。
ARCAはシチリア島の沖およそ100 キロメートル、 深さおよそ3,500 メートルにある。 索は大きく離れて立っており、 できるだけ広い体積を監視できるようにしてある。 ARCAは宇宙から来るニュートリノを探す。 活動銀河核、 超新星残骸、 そのほかの宇宙の加速器から来るものである。 これがニュートリノ天文学である。
ORCAはトゥーロンの沖、 深さおよそ2,450 メートルにある。 ここではセンサーが密に並んでおり、 より低いエネルギーのニュートリノも捉えられる。 ORCAは地球を貫いてきた大気ニュートリノを測定し、 そこからMSW効果を通じてニュートリノ質量の順序を決める。
同じ構造から、 こうしてまったく異なる二つの研究計画が生まれている。
なぜ海なのか
海水は透明で、 深く、 費用なしに手に入る。 その上の水柱は宇宙線ミューオンの大部分を遮る。 そうでなければあらゆる信号が覆い隠されてしまう。
この方法には欠点もある。 海水は放射性でその際に発光するカリウム40を含む。 また深海には生物発光する生物が住んでいる。 どちらも絶えず続くバックグラウンドを生み、 これを差し引いて計算しなければならない。
その代わり水は氷より光学的に透明で、 光の散乱が少ない。 南極の氷には粒界と過去の気候期に由来する塵の層が含まれ、 そこで光は向きを変える。 そのためKM3NeTは粒子の方向をIceCubeより鋭く決められる。 これは天空の源への対応づけにとって決定的である。
センサーの構造
光センサーは深海の圧力に耐える直径およそ43 センチメートルのガラス球に収められている。 各球は大きな管を1本ではなく、 31 本の小さな光電子増倍管を収めている。
この構造はKM3NeT特有のものであり、 はっきりした理由がある。 管がそれぞれ別の方向を向いているため、 たった一つの球からでも光がどの方向から来たかが読み取れる。 さらに、 複数の管に同時に当たる本物の粒子信号は、 1本の管だけの雑音とはっきり区別できる。
索は巻き取られた状態で海底に運ばれ、 そこで自ら展開する。 これは潜水艇の投入を省くための技術である。
並外れた事象
2025年2月、 共同研究グループはNature誌で、 ARCA検出器が記録した2023年2月13日の事象について報告した。
一つのミューオンがほぼ水平に、 そして並外れた明るさで装置を貫いた。 それを引き起こしたニュートリノの推定エネルギーはおよそ220 ペタ電子ボルトの領域にある。 これはこれまでに観測されたもっともエネルギーの高いニュートリノであり、 IceCubeがそれまでに見ていたものより一桁以上高い。
どこから来たものかは未解決である。 きわめてエネルギーの高い宇宙の加速器か、 あるいは宇宙線がマイクロ波背景放射に当たって生じる、 いわゆる宇宙線起源ニュートリノが考えられる。
注目すべきは、 この種の単一の事象がそもそもNature誌の論文になるということである。 それは最高エネルギー領域のデータがなお乏しいことを示している。
現状
両方の装置は段階的に拡張されており、 その途中ですでに測定を行っている。 この構造には利点がある。 索を一つ追加して係留するたびに検出器は大きくなり、 運転を中断する必要がない。
関連項目
出典
- KM3NeT共同研究グループ: Observation of an ultra-high-energy cosmic neutrino with KM3NeT, Nature 638, 376 (2025).
- KM3NeT共同研究グループ: Letter of Intent for KM3NeT 2.0, Journal of Physics G 43, 084001 (2016).