IceCube

地理的な南極点にある IceCube 観測所、2023年。
地理的な南極点にある IceCube 観測所、2023年。写真:Christopher Michel, CC BY-SA 4.0, Wikimedia Commons

IceCubeは世界最大のニュートリノ望遠鏡である。 それはタンクではなく、 1立方キロメートルの南極の氷からなり、 その中に掘削孔の奥深くまで吊り下げられた光センサーが行き渡っている。

施設は地理上の南極点、 アムンゼン・スコット基地のすぐそばにあり、 2010年12月に完成した。

構造

5,160 個の球形の光センサーが86 本の鋼索に吊るされ、 深さ1,450 メートルから2,450 メートルのあいだに置かれている。 各球は光電子増倍管とそれに付属する電子回路を収めている。 球は圧力に耐えねばならず、 また数十年にわたって故障してはならない。 二度と手が届かないからである。

掘削孔は熱水で融かしてつくられた。 深さ2.5 キロメートルの孔がおよそ2日でできる。 その後、 水はセンサーのまわりで再び凍り、 センサーを永久に閉じ込める。

検出はチェレンコフ放射によって行われる。 ニュートリノは氷の中での相互作用によって荷電粒子を生み、 その光の円錐をセンサーが捉える。 さまざまな球への到達時刻から方向とエネルギーを再構成する。

なぜ氷なのか

南極の深部の氷は驚くほど透明である。 人工的に精製したどんな水よりも透明であり、 それは何千年もの圧力がすべての気泡を押し出したからである。

さらに氷は無償で、 好きなだけあり、 かつ暗い。 そして遮蔽にもなる。 センサーの上には1.5 キロメートルの氷があり、 宇宙線ミューオンの大部分を受け止める。

水に対する欠点は散乱である。 氷には粒界と過去の気候期に由来する塵の層が含まれ、 そこで光は向きを変える。 そのため方向決定は地中海のKM3NeTより鋭くない。

濾過器としての地球

ある工夫があってはじめてこの望遠鏡は使えるものになる。 上からは大気で生じたミューオンが絶えず降りそそぐ。 その頻度はどのニュートリノ事象よりも百万倍高い。

そのためIceCubeはを見る。 北半球から来るニュートリノは地球全体を貫き、 下から検出器に入る。 そのほかのものはすべて惑星が遮る。

こうして南極点は北天を見ていることになる。

見いだされたもの

2013年——最初の宇宙起源ニュートリノ。共同研究グループはペタ電子ボルト領域のエネルギーをもつ事象を報告した。 これは加速器がつくり出すいかなるものよりも千倍高い。 天空での分布は、 それらがわれわれの銀河系の外に由来するに違いないことを示した。 最初の三つにはセサミストリートに由来する愛称が付けられた。

2017年——名前のついた最初の源。9月22日、 IceCubeは高エネルギーのニュートリノを記録し、 数分のうちに世界中の観測所へ自動警報を発した。 望遠鏡がその位置に向けられ、 そこにTXS 0506+056という名のブレーザー、 すなわち遠方の銀河の活動的な中心核が見つかった。 それはちょうど増光の最中であった。

一つの宇宙起源ニュートリノを名前のついた源に対応づけられたのは、 これが初めてであった。 この経過はマルチメッセンジャー天文学の模範例とされている。

2023年——ニュートリノで見た天の川。10年分のデータから、 光ではなく粒子で描かれたわれわれ自身の銀河系の地図がつくられた。 その上では銀河面が輝いている。 夜空に天の川として見えるのと同じ構造が、 まったく別の使者によって描かれているのである。

IceCubeのそのほかの成果

検出器は大気ニュートリノを測定し、 そこから振動パラメータを決定する。 より密にセンサーを配置した内部領域DeepCoreが、 この目的のための検出閾値を下げている。

われわれの銀河系で超新星が起これば、 個々の事象を分解できなくても、 すべてのセンサーが同時に明るくなることで信号となる。

体積をおよそ8倍にしたIceCube-Gen2が計画されている。

関連項目

出典

  • IceCube共同研究グループ: Evidence for High-Energy Extraterrestrial Neutrinos, Science 342, 1242856 (2013).
  • IceCube共同研究グループほか: Multimessenger observations of a flaring blazar, Science 361, eaat1378 (2018).
  • IceCube共同研究グループ: Observation of high-energy neutrinos from the Galactic plane, Science 380, 1338 (2023).