小柴昌俊

小柴昌俊(Masatoshi Koshiba)(1926年9月19日 – 2020年11月12日)は、 日本の物理学者である。 彼は1987年に超新星からのニュートリノが初めて検出された検出器を建設し、 それによってニュートリノ天文学を創始した。 2002年にノーベル物理学賞を受けた。
ありそうにない経歴
小柴は子どものころ小児麻痺にかかり、 右手に麻痺が残った。 同級生の多くが進んだ軍への道は、 これによって彼には閉ざされた。
彼は東京大学で物理学を学び、 そこを著しく悪い成績で卒業した。 このことは彼がのちに講演の際、 成績証明書とともに自ら好んで語ったところである。 その後アメリカ合衆国へ渡り、 1955年にロチェスター大学で学位を取得し、 そこで宇宙線に取り組んだ。
1970年、 彼は東京大学の教授となった。
Kamiokande:誤った問いのために建てられた装置
1980年代の初め、 小柴は、 彼を有名にすることになった課題とはまったく別の課題をもつ検出器を実現させた。 大統一理論は陽子が崩壊すると予言していた。 きわめて稀にではあるが、 十分な数を集めさえすれば測定できるというのである。
名前がそれを語っている。 Kamioka Nucleon Decay Experiment、 略してKamiokandeである。 亜鉛鉱山の地下1,000 メートルにある3,000 トンの水を、 およそ1,000本の光電子増倍管が取り囲んでいた。
陽子崩壊が観測されることはなかった。 それは今日まで見つかっていない。
しかし小柴は、 同じ装置をより感度の高いものにすれば別のことができると見抜いた。 太陽ニュートリノを測定すること、 しかも実時間で、 方向の情報とともに測定することである。 塩素タンクを用いるHomestake実験にはできなかったことであった。 Kamiokande-IIへの改造は1986年末に完了した。
1987年2月23日
その数週間後、 大マゼラン雲でひとつの星が爆発した。 およそ168,000 光年の彼方である。 それは1604年以来、 肉眼で見える最初の超新星であった。
Kamiokande-IIはこの日、 13秒のあいだに11個のニュートリノを記録した。 同時に、 オハイオ州の岩塩鉱山の検出器IMBがさらに8個を、 カフカスのバクサン観測所が5個を捉えた。 合わせて24の事象であり、 それとともに一つの新しい分野が生まれた。
時期の偶然はいくら評価してもしすぎることはない。 改造が半年遅れて完成していたなら、 誰も何も見なかったであろう。 小柴自身がのちに語ったところでは、 彼はこの日々に、 科学において幸運がどれほど多くを左右するか、 そして備えていること以外にそれを変える術がいかに少ないかを理解したという。
事象が示したことも注目に値する。 ニュートリノは光より数時間早く到達した。 ニュートリノは崩壊しつつある星の中心核をただちに離れるのに対し、 光は外側の層を通り抜けていかなければならないからである。 矛盾のように聞こえることが、 重力崩壊の模型の裏づけとなっている。
方向をもつ太陽ニュートリノ
Kamiokandeはさらに、 数十年来未解決であった問いを解いた。 サウスダコタ州のデービスのタンクは原子を数え、 数週間にわたる合計を与えるものであった。 数えられたニュートリノが本当に太陽から来たのかは、 そこからは読み取れなかった。
Kamiokandeは方向を見た。 そしてニュートリノは太陽の方向から来ていた。 これによって太陽ニュートリノ問題は決定的に、 測定技術の問題ではなく物理学の問題となった。
ノーベル賞とその後の影響
2002年のノーベル賞を、 小柴はレイモンド・デービス(Raymond Davis)と分かち合った。 二人の検出器は同じ謎に二つの側から取り組んだのである。 さらにX線天文学に対してリカルド・ジャッコーニ(Riccardo Giacconi)も受賞した。
しかし彼のもっとも重要な遺産は測定ではなく、 一つの学統である。 彼の研究グループからは梶田隆章(Takaaki Kajita)が出て、 2015年に自身もノーベル賞を受けた。 そしてKamiokandeはSuper-Kamiokandeとなり、 その後継であるHyper-Kamiokandeが現在建設されている。
小柴は2020年、 94歳で亡くなった。
関連項目
- SN 1987A — その超新星
- ニュートリノ天文学 — 創始された分野
- 梶田隆章 — 彼の弟子
- レイモンド・デービス — 共同受賞者
出典
- K. Hirata ほか(Kamiokande-II): Observation of a neutrino burst from the supernova SN1987A, Physical Review Letters 58, 1490 (1987).
- ノーベル財団: ノーベル物理学賞2002年、選定理由と小柴昌俊のノーベル講演。