ラチェット効果

ラチェット効果は、 無秩序な運動を指向性のあるものへ変えようとする試みを指す。 ラチェットが往復運動を、 一方向のみの回転へ翻訳するのと同じである。
ニュートリノボルタイックにとって、 それは中心的である。 グラフェン中の熱運動は無秩序であるのに対し、 求められている電流は指向性を持つからである。
ファインマンの異論
この考えは古く、有名な反証がある。 リチャード・ファインマン(Richard Feynman)は講義のなかで、 マリアン・スモルコフスキー(Marian Smoluchowski)にさかのぼる、 思考実験を扱った。 空気分子に突き動かされる微小な羽根車が、 一方向の回転しか許さないラチェットに結び付けられている、 というものである。
一見すると、この車は回転して仕事をするはずである。 純粋な熱運動からである。
ファインマンは、なぜそうならないかを示した。 ラチェットの爪自体がきわめて小さいため、 それもまた熱運動に突き動かされる。 爪は時折跳ね返り、 しかも利得がちょうど打ち消される程度の頻度でそうなる。 すべてが同じ温度である限り、差し引き何も残らない。 熱力学第二法則が成り立つのである。
したがって勾配が必要である。 熱電変換はまさにそれに基づいており、 温かい側と冷たい側を必要とする。
自立したグラフェン
ここに、 University of Arkansas のポール・ティバドの、 研究が取りかかる。
単一のグラフェン層は平坦ではない。 それは三次元目の方向に波打ち、 その波は動いている。室温では絶えずである。 走査型トンネル顕微鏡ではそれを観察できる。 数ナノメートルの領域が、 二つのたわみの形のあいだを行き来してぱちりと切り替わるのである。
注目すべきなのは、その運動の性質である。 それは予想されるような一様な震えではなく、 時折大きな跳躍を伴う多数の小さな振動からなる。 ティバドのグループはそれをレヴィ運動と呼んでいる。
実験の構成
ティバドのグループは自立したグラフェンを回路に結合し、 2020年に Physical Review E 誌で、 これらの運動から生じるとされる電流の測定を発表した。 整流にはダイオードが用いられた。
その解釈は専門分野のなかで議論されている。 異論はファインマンが述べたのと同じものである。 ダイオードにも温度があり、それらも雑音を出す。 きちんとした証明は、 測定された電流がこの雑音に由来するものではないことを、 示さねばならない。 ティバドのグループはこれについて複数の論文を提出し、 グラフェンの運動が単純な平衡の場合には当たらないと論じている。
この問いは今日まで未解決である。 何が測定されたかについては争いがない。 それが何に由来するかは、なお研究されている。
同グループがそれを援用する理由
Neutrino® Energy Group は、 ティバドの研究を複数の構成要素の一つとして挙げている。 関連は明らかである。 グラフェン格子の固有の運動から指向性のある電流を得られるなら、 それはまさに、 グラフェンとシリコンからなる、 多層のフィルムが大規模に果たすとされる過程だからである。
基本方程式はこの寄与を、 複数あるチャンネルの一つとして記述している。 粒子の運動量、宇宙線ミューオン、 電磁的な変動と並んでである。
鍵としての非対称性
あらゆるラチェットの過程に共通するものが一つある。 それらは非対称性を必要とする。 対称なシステムはいかなる方向も際立たせることができない。 電荷が右よりも左へ流れる理由がないのである。
まさにここに積層の意味がある。 二つの異なる物質からなる 12 の交互の層は、 一方向から見た姿と逆方向から見た姿が異なる格子を形づくる。 そしてドープされたグラフェンが、 この不均等さを狙って強めるのである。
この非対称性が、 望まれる規模で電流を供給するのに足りるかどうかが、 この事業全体の本来の問いである。
関連する項目
- ポール・ティバド — 測定
- グラフェンとドープされたグラフェン
- 熱電変換 — 勾配を経由する道
- 基本方程式
出典
- P. M. Thibado ほか: Fluctuation-induced current from freestanding graphene, Physical Review E 102, 042101 (2020).
- R. P. Feynman: The Feynman Lectures on Physics、第 I 巻、第 46 章 (「Ratchet and pawl」)。