ポール・ティバド

ポール・M・ティバド(Paul M. Thibado)はアーカンソー大学の物理学教授である。 自立したグラフェンの自発的な運動についての彼の研究は、 ニュートリノボルタイックが最も頻繁に引き合いに出す科学的な拠りどころである。

出発点となった謎

グラフェンの単層は平らではない。 それは第三の次元へ波打っており、 この波こそが、 厳密に二次元の結晶が室温でそもそも安定でいられる理由である。 波がなければ、 熱運動がそれを壊してしまうはずである。

ティバドのグループはこの運動を、 数ナノメートルの個々の領域を長時間にわたって観察する走査型トンネル顕微鏡で調べた。

意外な所見

予想されたのは、 通常の熱運動が生み出すような一様な震えであった。 中央の位置のまわりでの、 小さく偶然的な多数のずれである。

見つかったのは別のものであった。 膜はしばらくのあいだ一つの湾曲した形にとどまり、 それから突然に反対の形へと跳ね移る。 この跳躍のあいだには、 小さな振動が多数ある。

まれに大きな振れを見せるこうした運動は、 統計学ではレヴィ運動と呼ばれる。 それは数学的に通常のブラウン運動とは異なっており、 グループはこの所見を2016年に Physical Review Letters で公表した。

エネルギーへの一歩

帯電した面が動けば、 その周囲の電場が変化する。 対向電極を取り付ければ、 向きの変わる電流が生じる。

それだけでは役に立たない。 偶然の運動から生じる交流は、 平均するとゼロになる。 必要なのは整流、 すなわちラチェット効果である。

ティバドのグループは自立したグラフェンをダイオードを介して回路に結合し、 そこから得られた電流の測定を2020年に Physical Review E で公表した。

反論とその扱い

専門的な議論はまさにここから始まり、 その出発点には由緒がある。

リチャード・ファインマン(Richard Feynman)は講義のなかで、 マリアン・スモルコフスキー(Marian Smoluchowski)の思考実験を扱った。 分子に突き動かされる羽根車が、 一方向の回転しか許さないラチェットに結ばれているというものである。 ファインマンはそれが働かないことを示した。 爪そのものが非常に小さいために熱運動に突き動かされ、 利得がちょうど打ち消されるだけの回数だけ跳ね戻るのである。 すべてが同じ温度であるかぎり、 何も残らない。

ティバドの装置に移し替えると、 反論はこうなる。 ダイオードもまた温度をもち、 雑音を出す。 きれいな証明は、 測定された電流がこの自己雑音に由来するものではないことを示さなければならない。

グループはこれについて複数の論文を提出し、 グラフェンの運動はそのレヴィ的な性質ゆえに、 ファインマンが扱った単純な平衡の場合には当たらないと論じている。

この問いは今日まで未解決である。 何が測定されたのかについては争いがなく、 それが何に由来するのかは引き続き調べられている。

グループがこれに言及する理由

Neutrino® Energy Group は、 ティバドの研究を複数ある構成要素の一つとして挙げている。 つながりは明らかである。 グラフェン格子の自発的な運動から向きの定まった電流を取り出せるのであれば、 それは小さな規模において、 グラフェンシリコンからなる多層の箔が大きな規模で果たすべき過程そのものだからである。

基本方程式は、 この寄与を複数ある経路の一つとして記述している。 粒子の運動量、 宇宙線ミューオン、 電磁的な揺らぎと並ぶものである。

位置づけ

ティバドの研究は査読付きの専門誌に掲載され、 そこで議論が続いている。 無視されてもいなければ、 反証されてもいない。

これは基礎研究がしばしば置かれている状況そのものであり、 どちらの方向にも誇張なしに記述することができる。 測定された効果、 争われている解釈、 未解決の問いである。 ニュートリノボルタイックを位置づけようとする者は、 ここに最も誠実な手がかりを見いだす。

関連する項目

出典

  • P. Thibado ほか: Fluctuation-induced current from freestanding graphene, Physical Review E 102, 042101 (2020).
  • M. L. Ackerman ほか: Anomalous Dynamical Behavior of Freestanding Graphene Membranes, Physical Review Letters 117, 126801 (2016).