アーサー・B・マクドナルド

アーサー・ブルース・マクドナルド(Arthur Bruce McDonald)(1943年8月29日生、ノバスコシア州シドニー)は、 カナダの物理学者である。 彼はSudbury Neutrino Observatoryを率いた。 この観測所は2001年と2002年、 足りない太陽ニュートリノがどこへ消えるのかという問いに決着をつけた。 2015年、 彼は梶田隆章(Takaaki Kajita)とともにノーベル物理学賞を受けた。
経歴
マクドナルドはケープブレトン島で育ち、 ハリファックスのダルハウジー大学で学んだ。 1969年、 カリフォルニア工科大学で学位を取得した。 カナダの原子力研究所チョークリバーでの数年と、 プリンストンでの教授職を経て、 1989年にカナダへ、 オンタリオ州キングストンのクイーンズ大学へ戻った。
同じ年に、 彼を有名にすることになる計画の指揮を引き受けた。
30年にわたって未解決であった問題
レイモンド・デービス(Raymond Davis)が1968年以降Homestake実験の結果を提出して以来、 誰にも説明できない数が問題として残されていた。 ジョン・バーコール(John Bahcall)が計算した太陽ニュートリノの、 およそ3分の1しか届いていなかったのである。
この太陽ニュートリノ問題には二つの説明があった。 太陽模型が誤っているか。 その場合、 天体物理学者が根本的な何かを見落としていたことになる。 あるいはニュートリノが途中で変化しているか。 その場合、 素粒子物理学者が何かを見落としていたことになる。
どちらであるかを区別できる実験はなかった。 それまでの検出器はいずれも電子ニュートリノにしか反応しなかったからである。 つまり太陽が生み出す種類にしか反応しなかった。 粒子が途中で別の種類に変わっていれば、 検出器には弱い太陽の場合と同じものが見える。 事象が少ない、ということである。 原因は隠れたままであった。
着想:重水
マクドナルドの装置は、 カナダ独自の道に基づく工夫によってこれを解決した。 カナダは重水を用いるCANDU型の原子力発電所を運転している。 そこから1,000 トンを借り受けることができた。 数億ドルの価値がある。
重水は重水素を含んでおり、 重水素は二通りの仕方でニュートリノに反応する。
荷電カレントを通じて。電子ニュートリノだけが、 重陽子を2個の陽子と1個の電子に分解することができる。 したがってこの反応は、 どれだけのニュートリノが本来の種類を保っていたかを数える。
中性カレントを通じて。どのニュートリノの種類も、 重陽子を1個の陽子と1個の中性子に分解することができる。 この反応は、 種類にかかわらずすべてのニュートリノを数える。
両者の数を比べれば、 この問いに直ちに答えが出る。 しかも太陽模型をまったく持ち出す必要がない。 まさにそこにこの装置の優雅さがある。
結果
検出器はオンタリオ州サドベリー近郊のクレイトン・ニッケル鉱山の地下2 キロメートルにあった。 建設には9年を要した。
測定の結果はこうであった。 荷電カレントを通じては期待される頻度のおよそ3分の1が届いた。 まさにデービスが見いだしていた欠損である。 中性カレントを通じては満額の頻度が届いた。
これによって二つのことが同時に示された。 太陽はバーコールが計算したとおりの数のニュートリノを放っている。 そしてそのうちの3分の2が途中でほかの種類へと変わるのである。
太陽ニュートリノ問題は30年以上を経て解かれた。 計算の誤りによってではなく、 誰も前提としていなかった粒子の性質によって解かれたのである。
二人の受賞者がともに必要であった理由
梶田は大気ニュートリノによって、 ミューニュートリノが消えることを示した。 マクドナルドは太陽ニュートリノによって、 電子ニュートリノが変換されること、 そしてどこへ変換されるのかを示した。
二つの所見は合わさって初めて閉じた像となる。 ニュートリノは互いに移り変わる、 したがってニュートリノは質量をもつ。 標準模型はこの箇所で拡張されなければならない。
ノーベル財団は2015年、 まさにこの結びつきを顕彰した。
その後
マクドナルドは名誉教授となったが、 今なお活動している。 サドベリー観測所からは地下実験室SNOLABが生まれ、 今日そこでは暗黒物質が探索され、 SNO+によってニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊が調べられている。
彼はカナダ最高の民間人向け栄誉であるカナダ勲章のコンパニオンである。
関連項目
- Sudbury Neutrino Observatory — その装置
- 太陽ニュートリノ問題 — 解かれた問い
- 梶田隆章 — 共同受賞者
- ジョン・バーコール — その計算が裏づけられた人
出典
- SNO共同研究グループ(Q. R. Ahmad ほか): Direct Evidence for Neutrino Flavor Transformation from Neutral-Current Interactions in the Sudbury Neutrino Observatory, Physical Review Letters 89, 011301 (2002).
- ノーベル財団: ノーベル物理学賞2015年、選定理由とアーサー・B・マクドナルドのノーベル講演。