熱光起電力
熱光起電力(TPV)は、 報われる回り道を取る。 熱を直接に電流へ変えるのではなく、 まず熱に光を出させ、 その光を半導体の電池で捕らえるのである。
構成
二つの部分で足りる。 エミッタが高い温度にされ、 熱い物体がみなそうであるように電磁波を放射する。 向かい合わせに置かれた太陽電池が、 この放射を電流に変える。
太陽電池の場合とは異なり、 放射の最大は可視域ではなく近赤外にある。 2,000 ケルビンでは、 それはおよそ 1.5 マイクロメートルにある。
回り道が理にかなう理由
熱電変換は熱を直接に電圧へ変えるが、 そのために温度差を要し、 変換効率が8 パーセントを超えることはまれである。 理由は材料のなかの目標の衝突にある。 電気はよく通し熱はよく通さないものが要るのに、 ほとんどの物質では二つの伝導率が手を取り合って動くのである。
熱光起電力にはこの衝突がない。 その限界は材料科学ではなく放射の物理であり、 そちらは明らかに高いところにある。
決定的な二つの工夫
合わせられたバンドギャップ。 電池はエミッタのスペクトルに合わせて仕立てられる。 赤外の領域に向くのはヒ化ガリウム、 ヒ化インジウムガリウム、 ヒ化アンチモン化インジウムガリウムのような半導体であって、 シリコンではない。 シリコンの 1.12 電子ボルトというバンドギャップは、 これらの波長には大きすぎるのである。
現代の構成ではバンドギャップの異なる二つの電池を重ね、 それぞれが自分に合ったスペクトルの部分を使うようにする。
回収。 バンドギャップより低いエネルギーの光子は何も起こせず、 失われてしまうはずのものである。 それを無駄にする代わりに、 電池の背後に鏡が置かれ、 光子をエミッタへ投げ返す。 そこで光子は加熱に加わる。
この工夫こそが、 ここ数年の飛躍の理由である。 それは損失を循環に変える。 電池が使えないものは失われるのではなく、 加熱へ戻るのである。
技術の現状
2022年、 MIT と米国立再生可能エネルギー研究所の研究班が Nature で、 1,900度から2,400度のエミッタ温度において、 およそ40 パーセントの変換効率をもつタンデム電池について報告した。
これは注目に値する数値である。 それはふつうの発電所にある蒸気タービンの変換効率を上回っており、 しかも動く部品が一つもなく、 水もなく、 保守もない配置においてである。
想定されている用途
すぐに思いつく用途は、 電力を熱として蓄えることである。
余った風力と太陽光の電力が蓄熱媒体を、 たとえば溶けたシリコンや黒鉛の塊を2,000度以上に加熱する。 のちに電力が必要になれば、 TPV 電池がそれを再び取り出す。
魅力は費用にある。 蓄熱装置は安価で豊富にある材料からできていてほとんど劣化しないのに対し、 電池は高価であり容量を失っていく。 化学を用いない電池を手にすることになるわけである。
ニュートリノボルタイックとの区別
違いは出発点である。 熱光起電力は熱い源を要し、 その熱はどこかから来なければならない。 燃焼から、 集められた太陽光から、 あるいは蓄熱装置からである。 熱いエミッタがなければ、 放射も電流もない。
ニュートリノボルタイックは、 そのような源が用意されていないところから出発する。 その主張はどこにでも絶えず存在する流れに向けられており、 したがって暗がりのなか、 内部、 地下での応用に向けられている。
太陽光発電との比較についても同様のことが言える。 太陽光発電は外からの光を要するが、 熱光起電力は自らの光を自分で作り出す。
そこから学べること
熱光起電力は、 ほかの構想にも当てはまる二つのことを示している。
第一に、 見かけの回り道が近道でありうるということである。 熱を放射を経て電流に変えるのは直接の道より面倒であり、 そのうえ5倍を供給する。
第二に、 進歩は新しい基本の着想からではなく、 バンドギャップと鏡についての丹念な材料の作業から来たということである。 ニュートリノボルタイックが多層のグラフェンとシリコンの積層で自らに課した課題も、 まさにそこにある。
関連する項目
出典
- A. LaPotin ほか: Thermophotovoltaic efficiency of 40 %, Nature 604, 287–291 (2022).